ファンの子たちがずっとアンコールを求めて叫び続けるのにはびっくりしたが、いつのまにかしずかも一緒になってペンライトを振って叫んでいた。

人前で大声で騒ぐなんてはしたないと思っていたしずかの中の「お嬢様」が崩壊した瞬間だった。もはや、歳なんて関係なかった。キャーキャー叫びながらペンライトを振り続けた。

ぱっと会場が暗くなり、再び手を振りながら汗びっしょりの彼が登場すると会場全体がどよめき、しずかも飛び上がっていた。最新アルバムから一番ノリの良い曲を歌って会場と一体になるとそのまま終了。

しずかは夢心地だった。ふんわりした気分のまま、駅までの道のりをどう歩いたのか覚えていない。

友希恵さんたちはこのあと飲みに行くのかタクシーを手配してあった。彼女たちは学生時代の仲間みたいだし、しずかは一人で余韻にひたりたかったので遠慮した。

混んだ地下鉄はコンサートのグッズを持った若い女性の熱気でむんむんしていたが、札幌駅に着いたら急にお腹がすいてきた。

そういえば夕飯を食べていないことを思い出したが、すでに午後十時を過ぎていたので食べる場所も見つからず、一人でラーメン屋さんに入る勇気もなかったので、駅ナカのドーナツ屋さんでドーナツを買ってホテルに戻った。