A: 1つあれば十分だったというのは何となくイメージできます。何万年も前から食べ放題の世の中だったら、血糖値を下げるホルモンが2つくらいあってもよさそうですもんね。

M: 人類の進化の歴史からすると、食べ放題は1年のうち6分間程度ですから、環境変化に体の進化が追いついていません。今後1万年くらい食べ放題が続けば血糖値を下げるホルモンが2つになるかもしれませんが、私たちが生きている間に2つになることは絶対ありません。

A: そう考えると、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンはとても貴重ですね!

M: 冒頭のあきさんの質問に対する答えは「血糖値を下げるホルモンはインスリンしかないのに、食べ物はたくさん入ってくるというミスマッチによって、糖尿病を発症する」となります。このミスマッチを是正するためには、食べ過ぎを抑えることが絶対に欠かせません。

A: 糖尿病はミスマッチ病という先生の言葉、理解できました! 

3. 日本人はインスリン分泌能力が低い

A: 先日テレビを見ていたら、食べ過ぎ・運動不足で体重が200kgくらいに増えてしまい、ベッドから起き上がれなくなった人が紹介されていました。

M: あきさんが見た人、外国の人ではなかったですか? 

A: みなみ先生、すごいですね! そのとおり、アメリカの人でした。なぜ日本人ではないと分かったのですか? 

M: 実は、日本人は体重200kgのような超高度肥満症のレベルまで太るのが難しいんです。なぜだと思いますか? 

A: ん~、食べる量が違うからでしょうか! 去年、友達とアメリカに旅行に行ったのですが、お店でハンバーガーセットを注文したら、ハンバーガーもポテトも清涼飲料水もビッグサイズで、全然食べきれませんでした! ただ、現地の方はそれをペロリと平らげていて、とても驚きました。体格も私たちと全然違いましたけど……。

M: 私も海外のスーパーマーケットでピザを買ったら、ものすごい量が入っていてビックリした経験がありますよ! あきさんの言うとおり、体格差による飲食量の違いも一因としてありそうですが、それ以外に日本人と欧米人には、超高度肥満症のレベルまで太れるかのカギとなる大きな違いがあるんです。

A: 大きな違い……、何だろう。日本人は太りにくく、欧米人は太りやすい体質だとか? 

M: 体質、良い線いった答えですよ! では違いを説明していきますね。例えば、あきさんがポテトや清涼飲料水といった糖質を大量に摂取したとしましょう。糖質を摂取するとそれに合わせてインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を下げるホルモンであることは知っていると思いますが、もう一つ重要な作用があります。それは脂肪をため込む作用です。

A: 脂肪をため込む? 

M: インスリンは糖を脂肪に変える強力な肥満ホルモンなんです。そのため、糖質を大量に摂取するとインスリンも大量に分泌され、インスリンの作用で血糖値は下がるのですが、糖が脂肪に変換されて太ってしまうのです。

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