「君の栗林はとても興味深かったし、おたまじゃくしの池が見えてきた時は興奮したね」
「え? 見えるんですか?」
「実際に行くことはできないが気持ちに寄り添うことはできる」
「やっぱり、あなただったんですねカプリス」
狢は安堵した声で続けた。
「いつも誰かがそばにいるような気がしていた……」
「君の心が強く求めたから導くことができたんだよ」
「僕の心が?」
「そうだよ。今だってほら、すずらんの原っぱにいるあの子」
「え? 誰?」
「すずらんの原っぱで道を探している」
「どこどこ?」
「目をつぶって意識を集中してごらん、心の目で見るんだ」
狢は榛色(はしばみいろ)の丸い目を閉じた。
【前回の記事を読む】目的地にたどり着き、やっと人心地ついた狢。ふと静まり返った暗闇を見つけ…