遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

 

それからしばらくして山口家の一人娘、桃子姉ちゃんの結婚式が決まった。

もちろん出席する。

 

どうしよう。

新田のお母さんが来る。

 

新田家を出て初めてお母さんと会う。

恐ろしくてたまらなかった。

 

「どうしたらいいの」と半泣きでママやパパに聞いても「普通にしてたらいいよ」と答えるだけだったが、どうすればいいのかさっぱりわからなかった。

 

結婚式当日がやってきた。

沢山の人がいて、どこに誰がいるのかさっぱりわからないから、新田のお母さんといつどこで出会うかもわからなかった。

 

たまたま私がひとりで立っている時、向こうからお母さんが歩いてくるのが見えた。

こっちに向かって歩いてくる。

 

どうしよう。

私は固まって動けなくなった。

心臓がドキドキ鳴って口から飛び出そうだった。

 

お母さんは向こうから歩いてきて、私の目の前を通り過ぎていった。

私は空気で見えないかのように、無視されてしまった。

 

挨拶する最初の機会を逃してしまった私は、もうその後、お母さんのところに挨拶には行けなかった。

結婚式が無事終わり、とんぼ帰りで大阪に帰る予定だった私達だったが、なにやらママが新田のお母さんと長いこと話している。

なんだろう。

 

ママが戻ってきた。

「大阪に帰ろう」