第一章

5 私の挑戦

その日記は、十八歳の時、一九九八年の十月から書き始められ、その後数年間ほど付けられていたが、こまめに書いているのは最初の二年ほどで、次第に時々思い出したように記されるばかりとなり、しまいにフェードアウトし書くのをやめてしまった、という軌跡をたどっている。

書きはじめの当時は高校三年、大学の受験勉強の真っ只中で、こんなことをしていて何になるという疑問から、人生への懐疑を日記に記すようになったようだ。日記の冒頭にはこうあった。

『 一九九八年十月二日(金) 日々に起こる出来事、思いや思想、そんなものをつれづれなるままに書きたく、日記というやつを始めることにした。初の試みだ。さて、どうなりますか。 』

こんな飄々(ひょうひょう)とした文章から開始された日記であったけれど、翌日にはもうどろどろの片鱗を見せ始めるのだった。

『 十月三日(土) ぼくは高一の夏に人生が変わった。といったら大ゲサだけれど、仲の良かった友人に裏切られたことで、孤独の中に生きるようになった。裏切りといっても約束を破られたというテイドのことで、でもぼくはちょっと人間不信になったところがある。

ただ当時は小説を読んだり、自分でも書いてみたいと思っていたところなので、一人でいられる時間が増え都合がいいという面もあり、友だちなんて別にいなくていいさと、強がっていた。

現代小説もいろいろ読んだけれど、昔のモノのほうが好きだった。ダザイとかアクタガワとか。宗教的な本にもはまった。当時ベストセラーとなった『神々の指紋』という本を読んで神秘的な内容に面白さを覚え、その後もっと直接的な新興宗教の本なども読むようになった。

さすがにオウムの本は本屋にも図書館にも置いていなかったけれど。だいたいどれも、まもなく世紀末の破局が訪れて、その後神の時代がはじまる、といった内容で、でもぼくにはそれがひどくミリョク的だった。