この運転手氏には、往きの広島駅で新幹線を降りたところからお世話になったのですが、まず夫たちが駅に到着するや否や、一行を迎えてくださった位置が、介護タクシーの最短至近距離だったというのです。

そこは運転手氏が地元の方でも有り、車椅子での走行距離が短くて済むようにと駅の新幹線到着ホームの正面にデンと車を停めてお待ちくださっていたようです。私はホテルマンだとばかり思っていたのですが、その方が介護タクシーの運転手さんだったのです。

随行者には、とにかく雑用から離れ少しでも夫に目が向くようにして、荷物などは私がホテルマンだと間違えるほど身軽に運んでくださったのです。

またこの方は、一行が駅に着いた様子を見ていて、夫の様子がかなり重篤であり、振動が心配になると思われたのでしょう。福山までの帰りの車は、今使用の物とはもう少し揺れの緩やかな、あまり体に負担のかからない大きな車の方が良いと判断され、われわれがホテルで原監督と面接している間に家に帰られ、車を換えてこられたのだそうです。

この話を伺って私は、タクシーの運転手さんは車に利用者を乗せて目的地にまで運ぶことだけが課せられた仕事です。それであるのに、随行の人々が少しでも目配りが行き届くように、持参した荷物運びなどを手伝ってくださり、その上主たる乗員の体調を慮り、より振動の少ない、中でのスペースにもゆとりのある車に換えるという優しい行き届いたご配慮をくださるそのお心遣い、これが本当の《介護の心》だと思いました。

帰りは、この運転手氏のご配慮もあり、大きな新しい車で新幹線より揺れも少なく、心配した渋滞にも巻き込まれることもなく、快適に家に着くことができました。

午後九時の帰宅となりましたが、周りのみなさんの方がお疲れの色が濃く、そのお心配りが忍ばれました。みなさん、お世話様になりました。ありがとうございました。

かの運転手氏は、これからまた広島に帰られるのかと思うと、本当にお疲れ様です。

「わが福山市にも、このように心よりの介護タクシー業者がいたらいいね」と随行したみなさんも声を挙げて褒めておられました。

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次回更新は4月2日、11時の予定です。


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