「幻透視師とは、聞いた事はあったが、あのような不思議な力の持ち主だとは……、種を切る時は、まるで術にかかったようだった……」

ラ・エンカがそう言うと、御付きの一人が答える。

「ミヤン様は、幻透視師のなかでも最も秀でている大幻透視師であらせられます。多くの事を予言、予知出来る能力の持ち主で、あなたが現れ助けてくれる事も予知しておられました。本当に助けて頂きありがとうございました。お陰で私達だけでなく、多くの仲間が助かりました」

そこへミヤンが割って入った。

「助かって嬉しいのは分かるが、あまり余計な事を言うでない。この方は大丈夫だが、もうあのような事はごめんだからな……」

「すみません。私とした事が……」

御付きの女性は、頭を下げミヤンの背後へ下がった。次にミヤンはラ・エンカに言った。

「お主の炎は火の記憶、火の記憶は大九記憶の中の一つだが知っておったかな?」

ラ・エンカは初めて聞く様子で首を横に振った。

「大九記憶は混乱の世に、世界を形成する為に現れ、生まれながら記憶を持って生まれて来るが、よほどの強いプラーナの持ち主でないと使い手には、なれないようだ……」

「その……、プラーナとはなんだ?」

ラ・エンカは聞くと、ミヤンは自分の体を指さしながら答えた。

「プラーナとは、人の体内に宿るエネルギーのようなものでな、バー(魂)とアクト(体)を繋ぎとめる役目をしているんじゃ。人によりそのエネルギー量は違うのだが……」

ミヤンはラムカを見ると、(あの風もきっと……。しかしあの少女だとは……、壮絶な運命を背負って生まれて来ていたんじゃな……)と心の中で呟いた。

ラ・エンカは聞き終わると、幼き頃を思い出した。物心が付いた頃、指から炎を出す事が出来た。始めは驚いたが、誰もが出るものだと思い、皆に見せた。両親は初めてそれを見た時、困惑しラ・エンカに、二度と人に見せないようにと厳しく叱った。その時の苦い記憶を思い出し、深い溜息を吐いた。

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