梨花は自分に足りないものを持つ美桜が羨ましかった。美桜のキラキラした美しさにも憧れていた。彼女と正面から勝負しても、とても太刀打ちできないと思っていた。
でも今回だけは別……美桜に譲るつもりはないし、自分から諦めるつもりもない。
美桜には同じ動的な性質の朝陽がお似合いだと思っていた。
静的な印象の優凪と自分が一緒にいることが自然に思える。
優凪の隣は自分でなければ彼の持つオーラが崩れて自然の調べが乱れてしまうとさえ思える。
梨花は人のオーラを目でみるのではなく感覚的に感じることができた。
同じオーラの人といても違和感はないが、他のオーラの人といると苦痛でしかない。
自分と同じ花のオーラを橘先生と美桜に感じて二人に惹かれた。
同じ花のオーラを優凪からも感じたが、今まで男子から感じたことはなく彼が初めてだった。
美桜も梨花も言葉に表せない何かを優凪に感じ取っていた。
――梨花と美桜の二人にとって特別な存在の優凪。
そしてこの後、花の精はこの二人に平等にチャンスと試練を与えることになる。
家に帰ると橘先生に誘われて花壇に行ったことを優凪は母親の優海に報告した。
花壇での不思議な体験を話すと、「香織さん、あれからずっと抱えてたのね……」と昔のことを思い出しながら母親は語り始めた。
「彼女、辛かったのね。でもユウはいいことをしてあげたのよ。やっとこれで彼女も前に進めるようになるから」と母親が言うのを聞いて優凪は静かに頷いた。
「私もお父さんに会いたくなるとあの花壇に行くの。あそこに行くと花を通してお父さんが話しかけてくれるから」
「花と話してただけじゃないの」
「花とお父さんと両方、この前行った時は、『ユウももう高校生か、早いな』と言ってたわよ」
「僕もお父さんと話してみたいな」
「もう少しかな……花と話ができるようになれば、ね」
中学に入学して間もない頃に彼は父親を病気で亡くしていた。