シミュレーション2の結果からもわかるように、一時的に財政が黒字化しましたが二〇三二年からは再び国債の発行が必要となり、大量の出血を伴った割に最終的に国債などの公債発行残高は再び増え始めていく事になってしまいました。しかも、この無茶苦茶なまでの増税には、四つの落とし穴があります。
まず一つ目は、増税した直後に大幅なGDPの落ち込みがあるのを、前もって覚悟しなければならないという事です。シミュレーションでは、増税した時点で日本のGDPが四百七十兆円を切ってしまう計算になりますが、実際にはこの程度では済まないと予想されます。
その理由は、例えば百万円の売上があった会社が、消費税が30%になった瞬間、その売り上げが八十万円(20%分が増税となるから)となり、残りの二十万円はお客さんの消費税の預かり金として帳簿に記載されるからです。
本来、消費税は消費者が払うものだから、税率を上げても売上は下がらないとするのならば、仮に10%から30%に引き上げた場合、お客さんからの受取金額は百万円から百二十万円にならなければ数字が合いません。しかし実際には、財務省がいうようにはうまくいくはずもなく、お客さんは商品のグレード、または購入個数を下げて、結局、店がお客さんから受け取れる金額は百万円のままがいいところなのです。
GDPも同じで、増税した分は今までGDPの一部だったのですが、それが一挙に消費税の税収分としてGDPに組み入れられなくなってしまいます。このため、シミュレーションの数値までGDPが落ち込む事は確実で、実行するなら更にそれ以上の落ち込みがある事を、前もって覚悟しなければなりません。
しかしこれは、現在の政府も把握しています。前回の消費税の増税が10月だったのは、4月から始めるとその年度の経済成長率が著しく下がってしまうため、その落ち込みを半分次年度に回すために、前回は10月に増税を行ったのです。
そして、GDP自体が大幅に減少すれば、シミュレーション2のように仮に公債発行残高を毎年徐々に減らす事が出来たとしても、公債のGDP比率が一気に悪化し、結果として日本の借金は増えた事になってしまいます。シミュレーションでも、消費税を上げた瞬間、GDP比率はいきなり270%にまで悪化してしまいました。これでは、日本政府が国の借金をコントロールしているとはいえません。