また、先生が「はい、次は体の右半分に呼吸で空気を取り入れますよ」と摩訶不思議なことをおっしゃる。「えっ? 右半分?? 無理だよね、そんなこと」と思うが、先生の指導どおりイメージして呼吸すると、「できる」のだ。
その結果、右半分の半身が脱力でき心地良くリラックスできる。そして次は左半分の呼吸を行うと身体全身がバランス良くほぐれて、全身のリラックスが完成する。
まるでプロの整体やマッサージの施術を受けた後のような感覚になり、レッスン中であることを忘れて眠ってしまいそうになる。実際、呼吸法のレッスンでは眠ってしまう人が続出するらしい。とにかく自分自身の身体の中が自分自身の「呼吸」によって「調整」されるのだ。
調整の方法は数知れずあるらしく、先生の指導は万華鏡のように、くるくると色合いも形も変えて、汲めども尽きぬバリエーションで私の「呼吸」を磨いてくださる。
何だか確実に身体が癒え、神経が「深呼吸」し始めたのを感じる。その証拠に「あくび」が出るのだ。私にとって「あくび」は特にここ数年間は滅多に出ることがない、というより「出すことを許さなかった」症状だ。それがバランス操体をしているレッスン中に出始めたのだ。
私は初心者なので「バランス操体」の奥深さも身体という宇宙空間の神秘についても多くを語ることはできない。呼吸や重心の「空気感」に少し触れただけだから。けれどバランス操体のおかげで、私の壊れた副交感神経が確実に息を吹き返したことだけは確かだ。
「呼吸法」の奥深さは計り知れないが、生きとし生けるものの原点であり根幹であるということは理解できる。「呼吸の在り方」と「身体・心」とのつながり方においては、とにかく、何だか当たり前のようであるが当たり前では決してなく、とてつもなく不思議な広大な哲学が広がっているような気がする。
言い換えると「呼吸」が「現在の私の身体と心」を作っている。ということは今の私を苦しめる不眠や不定愁訴、身体の不調は自身の呼吸や身体の重心の歪みによって引き起こされている症状でもあるらしい。だから逆に、呼吸や重心を基軸に正しく使う方法を身に付ければ改善することができるらしい。
確かに、レッスンでは驚くことばかりが起きる。あくびが出たことも私にとってはすごいことだが、それよりもすごいと思ったのが、レッスンの日の夜は眠れるのだ。
いつも必ずレッスンの日に眠れるということではないが、レッスンを受けると眠れる日が出てきたのだ。