俺が扉を開けた途端
「ごめーん、お風呂とタオルと靴下と洋服を貸してくれないかな」
とノースリーブとミニスカートをペアで合わせてきた二人組が尋ねてきた。
「マリッサとエマか。どおりで扉を開ける前から騒がしいわけだ」
「エマはここへ向かう途中で車に泥をはねられたのよ」
と二人は勢いよく玄関に上がり込んで靴を脱ぎ始めた。なんだか勝手に領域に侵入されたみたいだ。
「せっかくオシャレしてきたのに台無しじゃない。あの車絶対に許さないわ」
マリッサとエマは、小学生の時から髪を染め、マニキュアをするオシャレ好きな子供だった。中学生になった頃のマリッサとエマは次第に校則を破り始める問題児に変化していった。教師に説教されると自分の過ちを認めず反抗ばかりするのだ。
ところがテストになると二人は学年の上位に入るため教師の悩みの種になっていたのは有名な話だった。
「今日はついていないわ。空は不吉な赤色だし、車に服を汚されるなんて……。きっとアタイに襲いかかる災いはこれだけじゃないわ」
「じゃあ次の災いに備えた方がいいな。まずはエマの要望どおり風呂に入ってきなよ、この醜い服装で家に入ってきてほしくないからな」
「えー、いいの?」
と嬉しそうにマリッサが尋ねてきた。
「俺はエマにいったんだ。汚れもしていないのに風呂に入りたがっているマリッサは皆が集まっているリビングへ直行だ」
マリッサはこの家を見て、風呂の大きさも確認しておきたかったのだろう。
「ウチラが最後なの」
「直接確認してみたらどうだ」
とリビングの方に向かってマリッサの背中を押した。玄関のドアノブに手をかけ、一歩前進して空を見上げてみた。昨日見た空よりも赤くなっていることを確認し、すぐに扉を閉めた。
エマを玄関から真っすぐ行ったところにある浴室へ案内した俺は
「服はステフィーのを使っていいぞ」
と勧める。