川端康成原作のこの作品のために、忠司は修善寺から下田までの街道をあちこちずいぶん見て歩き、作詞し、作曲してでき上がったのである。横浜のひばりの自宅に行ってけいこを始めると、ひばりは素早く忠司の気持ちを掴んで歌った。
注文をつけるところなどどこもなかったほど、美空ひばりという歌手のうまさに感心させられたと、忠司は自著『わが青春』の中で語っている。
♪三宅出るとき誰が来て泣いた
石のよな手で親さまが──
この出だしの詩は、三宅島の古謡だが、
♪まめで暮せとほろほろ泣いた
椿ほろほろ散っていた──
とあとに続く詩は、忠司の作詞である。今聞いても本当に素晴らしく、私も大好きな曲である。