玲子はデッキに置いていた新しいサーフボードを持ち、駐車場の車のところまで運び、後ろにある荷物の積み込み用のドアを大きく跳ね上げる。すると圭はすぐに車のところまで走っていき、ボードを積み込むのを手助けする。圭は「ちょっと待っていろ」と言って店の裏に走っていき、半乾きのウエットスーツも一緒に積み込んでやる。玲子が圭の左腕に軽く手を置き、お礼を言う。
「今日はいろいろとありがとう。とても楽しかったわ」
玲子はそのまま運転席に座り、サングラスをして車を運転して帰っていった。
車が走り去り、千佳が口をとがらせる。
「何て嫌な女。圭のことは千佳ちゃんに任せますなんて、どうしてそんなことを私に向かって言うのよ。よく言うわ。あの女はあの気味の悪い刺青男と一緒にいた女でしょう。絶対に何か怪しいわ。あの女に騙されないようにした方がいいわよ」
横にいたヨッサンが教える。
「千佳ちゃん、あの人はお医者さんだ。怪しいことなんかないよ」
千佳が怒った顔で食らいつく。
「ヨッサン、あの女がお医者さんだろうと何だろうと、怪しいものは怪しいのよ。これは女の勘よ!」
圭はデッキの椅子に足を伸ばして座ったまま笑っている。その後、「俺のところでコーヒーを飲んでいくか?」と聞かれた千佳は、めずらしく圭に「もう帰る」とふくれ顔で返し、バイクに乗って帰っていった。