夫は、自分は何でもできると思い込んでいるところがあった。プライドが高く、自分が納得しないと動けなかった。さらに、段取りが苦手なので、初めてのことは、どのような順番で何をしたら良いのかわからず、嫌がることが多かった。
「私が会社に行っている間に一人でいると危険じゃない。B型支援施設に行ってほしいよ」
と懇願した。
「絶対行かない。俺は、絶対嫌だ」
の一点張りだった。この一件以来、夫は、できると思っていた自分が、ひとりよがりで、思い込みだったと言われて、プライドも自信もなくしていった。
しばらくしてから、夫から話があると言われた。
「B型支援施設に行く代わりに資格取得をするための勉強をしようと思うんだけど、いいかな」
「目標がほしいのはわかるけど、それって頭が疲れない?」
「疲れないように休憩しながらやるよ」
夫の焦りが手に取るようにわかった。このまま進めることが良いことかはわからないけど、自らやりたい、と言い出したこのことを素晴らしいと思おう。
「何をするかわからないけど、挑戦すると言う人を止める権利はないよね。協力するよ」
私には、決めていたルールがあった。
・逃げない
・挑戦する人を止めない
資格を取りたいと目標を自ら発した夫をサポートしてみることにした。
「ところで何の資格をとるの?」
「行政書士」
「え!? それって、相当勉強しなきゃだめでしょ」
「勉強するよ」
この話を聞いたとき、合格・不合格よりも、目標を見つけることが大切で、合格は二の次なのかもしれないと思ったのだった。
「資格取得のための教室があるみたいだね。一緒に見に行ってみようか。申し込みまで私が立ち会えば、二度目に教室に行くことはできるよね」
初めての行動が難しい夫と一緒に教室を見に行った。
リアル教室とオンラインがあり、申し込み方法を確認してパンフレットをもらって帰った。ここまでは、順調に進んでいるように見えた。しかし、後日、思いもしない出来事が起こった。