枕に血
顎関節症、口を開けると音がする。
食べ物も小さくしないと口に入らない。
それでも入らないときは、指で押し込む。
固いものを食べるときはとても痛いし顎の音が頭に響く。
口腔外科の医師はお薬手帳を見て、ストレス(うつ)が原因ではないかとの診断。
追伸
朝、起きると枕カバーが血だらけ、鼻血ではなく歯ぎしりの血だった。
一番辛いのは歯科での治療、奥歯の治療。
「はい、開けてください、頑張って開けてください」。歯科医も私も必死に頑張る。
元夫から「彼女を愛人として認めてほしい」とお願いされた。
その夜から歯ぎしりが始まった。
嫌いになったもの
引き出しの保険証を探していたら、パスポートが不自然に二冊重なっていた。
元夫は北国でゴルフができない季節は、二回タイへゴルフに行く。
パスポートの写真を見て笑ってやろうと思った。
(免許証とか、こういった類の写真は意外に面白い)
パスポートを開けると知らない女性の写真、名前。あわてて旅行会社に電話を入れた。
聞きたいことが言葉にならない。
旅行会社はこういった対応に慣れているのか
「個人情報なのでお答えできません」の一点張り。
旅行会社から「奥さんから、ものすごい勢いで電話がきた」と聞いた元夫は帰宅後一言。
「ガタガタ言うな」
追伸
それから、ゴルフとタイが嫌いになった。
私は元夫とゴルフができるようにレッスンにも通って一応努力した。
元夫は、南国を二人で楽しく過ごし、私は雪かき。涙は寒さで痛かった。
鼻先はもっと痛かった。
詫びろ
父の命日がくる。
朝、姉から父が亡くなったと連絡がきた。
介護士さんが朝の見回りの時、ベッドで冷たくなっていたと聞いた。
看取る人もなく亡くなった父に早く会いたい。
一番早い飛行機で帰りたいと元夫に頼んだ。
「俺はお店があるから、後から行く」と次の日の飛行機できた。
父の出棺の時「男性の方手伝いをお願いします」。元夫は一番に立ち上がった。
(思えば、このような時、あのような時、変に張り切る男だった)
追伸
葬儀も終わり、家に帰って散らかった家の掃除、見たくないものが出てきた。
父の亡くなった日付のレシート、彼女と夕食をしたレシート。
その場に座り込んだ。
詫びろ。私にではない。私の父に詫びろ。
父の四十九日、ドクターストップ。家で手を合わせた。