全てが 圧倒的な緑だった

あまりの変わりように 俺はつい

自分も植物になった気がして

自分の身体を見てみたが やっぱり

人間の身体でしかなかった

花たちが せわしなく行きすぎる

立ち尽くしてる俺は たぶん邪魔だ

この街は いつも俺たちを急きたてる

俺も行かなきゃと 思うけど

どの木が どのビルなのか分からない

見回しても 目印になるものはない

ただ 天を突く木々たちが悠然と

足元をうろつく花々を 見下ろしていた

会社はたぶん あの3つ目の木の

横を曲がった先だろうけど

俺は立ち尽くしたまま ため息をついた

会社のビルも きっとこんなだ

わざわざ行っても どうせクビだ

だけど だからってどこへ行く?

そう思う俺の手が ポケットに触れた

今は ぺたんこのポケット

いつも 携帯を入れてた場所

機械越しなら まだ聴きとれる

誰かと話したいのか? よく分からない

だけどああ 誰か 俺に 世界を

・・・いや違うとにかく そう携帯だ

俺は頭を振って 会社への道を辿りだした

花々が ひときわ出入りをしている

ここで間違ってませんように

ポケットを握りしめ 俺は巨木に入った

 

【第1回から読む】詩集「まかろんのおもちゃ箱」より三編