「それはタマが説得してよね」
「お前が致高様をお呼びしたいと言ったんだろう」
「タマも乗り気だったじゃない!」
一気に私は言ってやると、猫が眉間にシワを寄せたような渋い顔付きになる。
「……お前はーまあいい待つとしよう」
ため息を一つ吐くタマ。
暫くすると初夏の陽光を受けながら、致嗣がやって来た。
「ようー早いな。えぇ何も持って無いじゃないか」
そんな事を言いながら致嗣は地面に描かれた魔法陣を見て驚く。
「うあぁ! この模様は何だー」
「色々思うところはあると思うけど、まずは落ち着いて話を聞いてほしい」
私は静かにそう言うと、致嗣をじいっと見詰める。
致嗣も「わかった、話せよ」と言い、こちらを凝視する。
すると、タマが致嗣の前にすっと出て来た。
「お前は入尾城主、水野致高様の末裔だな」
突然頭の中に響く声に、辺りを見回しながら大声を出す致嗣。
「な、なんだ、誰だ!」
「お前の前に居る猫だ」
タマは致嗣を見上げている。
「えぇーっ、どうなっているんだ! ……洋子、お前が話しているのか? ……いや、違う、頭の中で聞こえたぞ。どう言うことだ?」
混乱のあまり、自分で答えて自分で否定している致嗣。そんな有様が面白いと思いながら、呼び捨てで洋子とは何だこの野郎、と思うのでした。そして私にもどうしてだか聞こえているタマの話を受けて答えるのだった。
「私は話してないよ、そこに居る猫のタマが聞きたいみたい」冷たく言い放つ私。
なおも驚きが収まらない致嗣は声のトーンが益々上がっていく。
「どうなっているんだ! タマって何だ、話しする猫! どうなっているんだ」