3-2 手話通訳士と高年齢化
植村(2019)(注2)は、「手話通訳士と高年齢化」について、以下のように述べている。
手話通訳士の年齢が高いことは手話通訳士の手話通訳の経験年数も長くなる傾向にあり、それだけ熟練した手話通訳ができるようになっている可能性も高い。ただし、年齢が高い手話通訳士からは、手話通訳、特に政見放送等の高度な手話通訳や講師活動、研修会への参加等が難しくなってきているという声もある。
また、若年層の参加が続かないと、手話通訳士の資格制度自体はもちろん、関連する手話通訳事業、特に手話通訳士であることを求められる高度な手話通訳(政見放送や司法場面における手話通訳等)が今後困難になってくる可能性も高い。したがって、若年層の手話通訳士の取得が非常に重要な課題になってきていると言える。この問題への対応は、若年層に手話通訳士の試験を受けるように働きかけることが 重要であるが、それだけでは十分ではない。
手話通訳士の受験にいたるまでの①手話への関心の広まり(手話サークル等での手話の普及)、②手話通訳者になりたいと思ったときに身近に受講できる手話通訳者の養成講座、③手話通訳士試験を受験したいと思ったときに受講できる手話通訳士試験受験対策講座、④手話通訳士試験に関する テキストや参考書、⑤手話通訳士試験の受験のしやすさ(設置会場等)のみならず、⑥手話通訳士を活かすことのできる雇用や報酬額などとも大きく関わってくる課題である。
つまり、手話通訳者の養成や手話通訳制度の全体的な向上と大きく関わっていると言えよう。こうした若年層を意識した手話通訳者・士の養成や手話通訳制度の改革が必要になっているといえる。
注2:横山典子(2018)「手話通訳者の健康を守る取り組み」第13回文芸思潮エッセイ賞社会批評佳作
【前回の記事を読む】【論文コンテスト大賞作】「ボランティアだけで終わるのではなく、きちんと職業として生活できるようにして」