しかし猫の手には本はなく触手を払った時に本を投げていたようだった。
皆が探すと本堂の中央の床に本が落ちていた。カイユは逃げ惑う信者の群れから抜け出て本に近付くと、化物は触手を伸ばしながらカイユに向かい突進して来る。カイユはしゃがみ本を手に取ったが、迫り来る化物を見て体がこわばり動けなくなった。
それを見たベルサはカイユから本を取りあげ、そのまま本を壁際へ向かい投げた。化物は走りながら本へ顔を向けたが、体は急に方向転換出来ず、横転してカイユ達に向け滑って行く。ベルサはカイユの腕を引っ張り間一髪避けると、直ぐにベルサは、壁際に落下した本を拾いに走った。
信者達は皆、本堂から出て行こうとして出入り口が詰まり、壁際で出るに出れなく溢れていた一人の信者の前に本が落ち、その信者は本を拾うと、化物は起き上がるとその信者に向け走りだす。信者は迫りくる化物に恐れ本を宙へ投げたので、化物は顔を本に向けたが止まれず勢いよく今度は壁に顔面を衝突させ埋め込んだ。
ベルサは本堂中央の床に落ちた本を見付け走った。化物は壁から顔を抜くと直ぐに本を探し、辺りを見回した。ベルサが本を拾っているのが目に入ると化物は向かって行く。ベルサは何故か背を向けて立ち止まっていたのでカイユは叫んだ。
「危ない‼ ベルサ逃げろ‼」
化物がベルサに向かう中、ベルサは背を向け腕を動かしていたが、カイユには何をしているのか見えなかった。化物は勢いよくそのまま立っているベルサの背に向け体当たりをくらわした。ベルサは宙に吹き飛ばされると、そのまま勢いで鏡の中へ吸い込まれて行った。カイユは大声でベルサの名を叫んだがもう彼女の姿はなかった。
出入り口で詰まっていた信者達が呆気にとられていると、ベルサが投げたのか床に本が落ちた。ローザはそれを見ると直ぐに拾いに行き自分の懐へ入れた。
化物は鏡の前で急に勢いがなくなり、まるで電池が切れかけたおもちゃのような動きに変わった。その直後、化物は体から弾けるような音が聞こえて直ぐに、異臭を放つとミルミルと化物の体は溶けだし燃え始める。ベルサが消え床に泣き崩れているカイユを何者かが抱え、火の手が上がる教会から出て行く。カイユはその腕の中で気を失っていた。