朝の拶挨のあと、先生に促されて教室の前に出て、お通夜に来てくれたことのお礼と、引っ越して叔父さんたちと暮らすこと、残り少ない小学校の生活を頑張って過ごすからよろしくお願いしますと話をまとめた。
みんなは真剣な顔で聞いてくれた。誰も何もしゃべらなかった。拍手をしようかと手を合わせかけた子もいた。
先生はすかさず、「こういうお話のときは坂上君にお辞儀をするのよ」そう言ったらみんなはばらばらと頭を下げた。僕もちゃんとお辞儀をしてから席に戻った。花井先生はしばらく間を置いてから、
「両親が一度に亡くなることがどんなに悲しいことか、それぞれで想像しなさい。お父さんかお母さんがいない人もいるけれど、それぞれ大変で辛いこともあるでしょう。けれど将来、人の気持ちのわかる優しい人になれます」というようなことを話した。
先生は話し終えてから声の調子を変えて、今日の予定を話し始めた。みんなの緊張が解けた。
式のあと、運動会についての学級会で、僕は裕ちゃんと光君と一緒に応援団に入ることにした。大声で応援して夢中でやれば自分が元気になれそうだし、周りからの気遣いを吹き飛ばしたかったし、千恵姉ちゃんたちに元気な姿を見せれば喜んでくれるだろう。
結局、僕が赤組全体の応援団長になった。光君が「ヒロちゃんがやった方がいいよ」と勧めるし、僕もやるなら中途半端じゃない方がいいと思って引き受けた。
運動会当日まで学校でも家でも応援団の振り付けを考えて、メンバーに教えたり、練習したりでとても忙しかった。声ががらがらになった。結果的に赤組が応援賞をもらえて僕が表彰台に立った。
運動会の日には千恵姉ちゃんと昭二兄ちゃん、お祖父ちゃんも朝から表彰式が終わる最後まで見てくれた。お姉ちゃんはつばの広い帽子をかぶって、とっても目立っていた。僕や由美のことを探して嬉しそうに写真をたくさん撮っていた。
応援賞の発表のときはお姉ちゃんが飛び跳ねて手を叩いて喜んで、お兄ちゃんもお祖父ちゃんも顔よりも高い所で大きく拍手して笑っていた。表彰台の上から三人のいる場所だけが浮かび上がって見えた。
そこに向かって自然に笑えた。