〇支那史
⑨史記(巻一・本紀・五帝紀)
【9】「虞舜」
古代(伝説となるほど遠い昔)の頃のお話です。
虞舜の父を瞽叟といいました。舜の母が死んだ後のことです。
瞽叟は、さらに結婚して、母は象を生みました。父は頑固で母は口やかましく、象もまた、いばっていました。
父母は舜に対する愛情が消え、象を愛しており、常に舜を殺そうと望んでいます。
舜は、うまく避けて逃れることができましたが、小さな過ちがあると罪を受けました。舜は、なるべく相手に合わせ従って、子としての道を失うことなく孝行を続けていました。
舜は毎日、田んぼに行っては大空を見上げながら号泣し、自分が親に受け入れられないことを悲しみ、亡くなった母を慕うばかりでした。
それでも受け答えする時は常に孝行することに努めて、弟に対しては慈愛をもって接していきました。
舜のこのような孝行は日毎に深くなり、その結果、瞽叟もまた、真であるとして認めてくれるようになります。
歳が二十歳になった頃には、その孝行の心は国中に広まっていました。
舜が歴山で田畑を耕すと、歴山の人は、みんな田んぼの畦道で道を譲る心持ちになりました。雷澤で漁をすると、雷澤の人は、みんな住家を譲る心持ちになりました。河濱で焼き物の器を作ると、河濱の器は、みんな、曲がりがない綺麗な器になりました。
当時の帝であった堯は、その孝行を聞いてから、自分の次女を舜の妻にすることにします。
舜が三十歳になると、国に召し抱えられ、ついには堯から天子の位を譲り受けることになりました。