「昨日はね。たまたま……」
「ごまかさないでください!どうせ生徒に言っていることは、全部綺麗事ですよね。じゃなかったら、多重人格者?」
(今日は、私の勝ち!)
「フフフ、ばれちゃ~しょうがねぇなぁ~」
「はい?」
バーバラは不気味な笑みを浮かべながら囁く。
「実は、私の中にはたくさんの人格があるのよね。昨日はね、キャサリン六十七歳が出てきてね。キャサリンは、腰が悪くて、接骨院の帰りだったみたい」
「はあ?」
バーバラは、話を続ける。
「前にダンサーのYOUKOには会っているよね」
「え⁉」
(あの時のダンス? 確かに別人みたいだったけど……。嘘だと分かっていても、何か怖い)
「さっきまで、リフティングが得意なマイケル十八歳もいたけど」
ふと、保健室の隅にあるサッカーボールが目に入る。
(え、なんで保健室にサッカーボールが?)
「もうすぐ、フラフープが大好きな圭吾君、八歳もくるよ。会ってみる?」
壁にフラフープが立てかけてあるのも見える。
(なんで?)
果音の背筋がぞくぞくする。
(やだ、マジ怖い!)
「キャ~」
果音はダッシュで保健室を後にした。保健室を後にする果音の背中を見ながら、バーバラは少し申し訳ない気持ちになった。
「少し、脅かし過ぎたかな。今度、謝らないといけないな」