「ちなみに、自分も登録してるんです」
言うが早いか、千春が登録している顔写真を見せてきた。わたしは首を伸ばして覗き込む。
千春とそっくりな女性――つまり、わたしと瓜二つの人間が二人もいた。
わたしは「えっ!?」と目を大きく見開いた。
ヘアスタイルは一人が金髪ミディアムで、もう一人は黒髪ロングのストレート。コロナ禍なのでマスクをしていると思いきや、二人とも素顔をさらけだしている。顔だけ見るとたしかに似ており、コピー人間といっても過言ではない。
しかし、体型はどうだろうか。細身の千春はわたしより数センチ身長が低いだけなので、街中で見かけたら見間違える人がいるかもしれないが、写真の二人は今のところ疑問である。ぽっこりとした三段腹の持ち主かもしれないし、お人形さんのような小さな女の子かもしれない。
「で、近く会う約束をしましたー」
くだけた口調で言い、千春が画面を指差す。
「黒髪の女の子と」
わたしは思わず息をのんだ。
「連絡取ったの?」
「当たり前じゃないですか。そのためのサイトみたいなもんですよ。会うのはこれで三回めかなー。せっかくだから先輩もきません?」
千春がニンマリと目を細める。
「わたしも?」
さて、どうしたものか。会ってみたい気持ちはあるが……。
わたしは親指の爪を噛んだ。
「もしかして、ビビッてます?」
千春が挑戦的な目で見る。
「二人めのそっくりさんに会うことに」
カチンときた。
噛んでいた爪を離す。
「いくわ」
「そうこなくちゃ。じゃあ、彼女には先輩のこと伝えておきますね」
そう言うなり、千春は立ち去った。
わたしは校舎の壁に寄りかかり、大きく息をついた。千春と話をしているとなんだか疲れる。刑事から執拗な取り調べを受けている被疑者のように、追い詰められている感覚に陥るのだ。
「双子みたいでおもしれーじゃん」
とイガラシ君は言ったけど、全然面白くない。考えようによっては双子キャラから三つ子、四つ子……とある意味、面白い方向に転がっていくかもしれないが、面白いと言うよりハラハラする。千春の言動は先が読めないのだ。こういう人生を、ジェットコースタードラマというのだろうか。
――三人めに会うと死ぬんです。
ふと、この言葉が脳裏をよぎった。