「宇宙遊泳みたい!」ローゼが教えてくれた“知らない世界”
知らない世界
【最終回】
丸岡 永乃
この世界には、知らないことがいっぱいある。誰かのおかげで、それを知ることができる。
知らない世界へ誘い込んでくれる絵本。
チェス工房で昼も夜もこまづくりをする職人のヘルブラオは、仕事の時はもちろんのこと、ひと息つくときも、休みの日も、いつでもこまづくりのことで頭がいっぱい。長い月日が経ったあるとき、ヘルブラオはふと、自分のつくったこまでチェスをしてみたいと思い、チェス仲間を募集することに。※本記事は、丸岡永乃氏の書籍『知らない世界』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
知らない世界
(橋から見下ろす夕暮れの川は綺麗だったな……)
(初めて見た蝶々は新種かもしれないぞ……)
タンデムをこぎ続けてゆくうちに見たことのない景色に囲まれてヘルブラオは新鮮な気持ちになっていた。
上り坂をふたりでタンデムを押し進めれば丘の上に現れた体育館。ローゼが扉を開くとそこには2本の鉄のリングを平行につないだ大きな器具が並べられていた。
「ようこそ、ヘルブラオさん! これはラートという競技で使うリングで、体を入れて回るのですよ」
ローゼはラートの選手だった。ヘルブラオがこまづくりに勤しむようにローゼもラートに励んでいた。
「わあ、面白そう! わたしにもぜひ、やらせてほしい!」
初めてのことに挑戦するヘルブラオ。ドキドキとワクワクで胸がはちきれんばかり。
「ステップに足を置いて、グリップを握ったら、反動をつけて、さあ、回れ!」
ローゼに教えてもらいながら回り出すヘルブラオ。ぐるり ぐるり ぐるり……