I子ちゃんのお母さんは、とても素直な人であり、又、わが子のことで必死だった。そのため「年齢相応の自我を鍛えるために、こういうことをやって下さい」という私の助言を、ことごとく実行したのであった。それによりI子ちゃんは二年生の終わりの頃には学習上も他の子と並ぶようになり「普通の子」になれたのである。

自分という中心が弱く育った子は、なるべく早めに“手当”をすると、きちんとギャングエイジを乗り越えられるようになるのである。I子ちゃんのお母さんは私と何かの折に会うと、必ず涙をボロボロ流すのであった。

「お母さま、良かったですね。I子ちゃんは、将来、自分に合った仕事に就く事ができますよ。本当に良かったです」

「うちに来て良かったです。あのままですと極端な低学力のままで、イジメにあう可能性も高いし……。おそらく四年生位では学校に行かなくなっていたと思います」

と、言うと、お母さんは

「先生、本当に有り難いです。実は、私のところは親戚が二人も不登校になってるんです。主人の弟は、もう二十才すぎで引きこもってます。この間は、いとこの子が四年生なんですけど学校に行かなくなったっていうんです。うちは本当に良かった、良かったって、いつも思ってます。私、先生を見ると泣いちゃうんです」

と、涙をボロボロ流すのであった。

くり返し述べるが、人間が、思い、考え、決定し行動するためには、その中心に「自分」というものがあるのだ。今、この「自分核」がしっかりと形成されていない子が非常に増えているのである。「自分核」が弱ければ、自ら決定したり行動する力―自分力―が弱くなるのだ。そして、そのような子は、不登校や引きこもりになりやすいのである。

この、「自分核」が弱いために「自分力」の弱まっている子は、それを鍛えればよいのだが、現在の幼児教育や児童心理学の根幹に、この考えが定着していないと思われる。

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