その何日か後、巡回中に畑山は不審者を見つけた。どうにも動きが怪しい。そわそわして何かを隠し持っているような仕草の男であった。

職務質問をして、その鞄の中を見せてくれるように言う。男は、渋っている。怪しい。それでも何とか同意を得て中を確かめた。そして、妙なものを発見した。どうも女性ものの下着のようである。

畑山は、また下着泥棒の変態野郎かと思った。また、といっても、自分のネタと同じだからというだけで、犯罪者が重なったわけではない。

畑山が、地面に置いた不審者の鞄の中を上半身を折り曲げて探っていたところ、その鞄の上にまた新しい女性の下着が落ちてきた。

畑山は思わず「何だ?」と声を上げた。

「どうして下着が勝手に増えるんだ?」と思ってよく見ると、見覚えのある下着である。畑山が背負っていたリュックからこぼれ落ちたものだったのである。

畑山は、下着のネタのために買い込んでリュックに入れていたところ、チャックを閉め忘れていたため、上半身を折り曲げたときにリュックからこぼれ出てしまったというわけである。

するとその男がうれしそうに、

「あら、お巡りさんも」と言い、安心したように語り出した。

「実は、私、女装が趣味なので、これ私のものなんです。別に盗んだりしたわけではありません。お巡りさんも、お仲間だったのね」と言い、ウインクした。

「いや、これは……」と言って口ごもった。自分の考えたパンツネタの小道具とも言えず、もちろん、警官が漫才をしていると言うわけにもいかない。

「こ、これは、証拠品だ。さっき下着泥棒を捕まえたからな。お前も、そんなこと言ってるが、本当は盗んだんじゃないのか」

そう言われて、その男は、

「嘘だと思うなら、これを見て」と言って、自分のスマホを畑山に見せた。その中にその男の写真が入っており、確かに、女装している姿がたくさん残っていた。畑山は、

「分かった、分かった。じゃあ、その下着は、お前のものということなんだな」

そう言われて、男は、はずかしそうに頷きながら、思わせぶりに畑山にウインクした。そして、身体を摺り寄せてきた。畑山は焦りながら、

「だから、俺のは違うって言ってるだろ」と言いつつ、男の身体を押し戻した。

そうしてその男は、名残惜しそうに何度も振り向きつつ、去っていった。

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