「うん。全部思い出したよ。私の顔を返して、私の顔を返してよ!」

と前川さんの両肩をつかんで泣き叫んだ。

「何言っているの?」

前川さんの顔が一変し急に抱きついてきた。小さい声で、何かを言いながら崩れて落ちた。目の前にいたのは、血だらけのナイフを持った高橋さんだった。

「高橋さん、ここで何をしているの?」

と、震える私。

「小森さん、本当にごめんね。あの日、君に告白をしなければ、君の顔がこんなことになることはなかったんだ。僕はずっとずっと好きだった。君を守りたくて、ごめんよ」

「ギャーーーーーー、ギャーーーーーーーー、誰かー」

「警察呼んでー、早くー!」

と館内に響く声。高橋さんは、その場から走って去っていった。それから警察が来て、高橋優が自首したことを告げた。会場では前川さん以外に2人の遺体が見つかった。相沢さきと、佐々木裕太。死因はナイフで何回も刺されたことによる大量の失血死。

私は警察に呼ばれて、長い間事件について取り調べを受けた。その刑事は、米田さんといって、私が視力を失った2009年8月7日の暴行事件の担当だった。犯人が見つかっていなかったことがずっと気がかりで、私と高橋さんのことを心配していたという。何故彼が3人を殺害したのか……。高橋優の供述をもとに米田さんが話をしてくれた。

中学3年生の時、高橋が私に手紙を渡してから、前川と相沢と佐々木の嫌がらせが始まったという。前川は、高橋に

「これ以上、小森に近づくと殺すよ」

とまで脅迫をしてきたらしい。相澤と佐々木は熱烈な前川のファンで、前川の指示にはなんでも従い、どこ行くのにも一緒だったと同級生が証言している。

【前回の記事を読む】「こんなの私じゃない!」中学時代のアルバムで思い出してしまった“忘れていた過去”