しかしゲームはあっさり終わってしまった。なかなか少女と出会えなくなり、懸命に探していたら、図書館を出ていくきゃしゃな彼女の後ろ姿を見つけた。隣には母親らしい女の人がいた。

ふと少女が後ろを振り返った。ぼくと目が合うと、親指を突き立て、ニコリと笑った。そしてなにごともなかったように、出ていった。ぼくはいったん高まってしまった気持ちを落ち着かせるために、近くにあったイスに腰かけ、ルーブル美術館集を眺めていた……』

これが十九歳の私の現実だ。人生いかに生きるべきか? と欲求不満が混沌として混ざり合っている。さあ、四十一歳の私よ、こいつに挑戦だ。

しかしこれは、危険なゲームでもある。図書館の中に少女を見つけ出し、鉢合わせゲームをやらねばならないのだ。変態と勘違いされて通報でもされたら、私の人生が終わってしまう。なるべく怪しまれない程度に、やるべきだ。

館内には、小学生だか中学生だかのそれらしい少女は数人いた。しかし当然ながら彼女たちは私になんの関心もなく、友だち同士無邪気に笑っている。関心がないのはこちらにしても同じで、ロリコンの趣味はないつもりだ。むしろ近頃の関心はもっぱら美魔女であって、いよいよ私の色恋の趣味は枯れてきている。

さて誰をターゲットにしようか。薄暗い本棚の間を巡っていたら、ピンクのヘアーバンドをつけた少女とすれ違った。身長は私の肩くらい。肌は小麦色に焼け、白い半袖シャツに、Gパンを履いていて、ほっそりしていて愛らしい。白いマスクから出た瞳は、つぶらでキリッとしている。よし、あれにしよう。

一人なのか、友だちか親と来ているのだろうか。今度すれ違った時は、笑いかけてみようか。さすがに親指を突き立てることはためらわれる。私は彼女が去っていった方に向かって、適当にぶらぶらさまよってみる。少しドキドキしていた。無論性的な興奮などではなく、怪しまれて通報でもされたらという、身の危険による緊張である。

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