こうした激しい選挙戦を勝ち抜いてきた二人の衆議院議員の実体験に基づく貴重な意見を参考にしながら、武藤は選挙戦に臨む街宣車の選定をしていった。その結果、ベースとする街宣車はミニバンとし、車両本体価格は新車で概ね五〇〇万円、その車に施す選挙用の看板、スピーカー等の一式の仮装代がおよそ二〇〇万円で街宣車一台当たりの費用は七〇〇万円ほどとなった。
最低でも衆議院小選挙区比例代表制一〇ブロックとなると一〇台必要となり、ざっと七〇〇〇万円の買い物となる。武藤はこれをクラウドファンディングと政党助成金で賄おうと思っていた。
並行して武藤は、新党立ち上げに参加してくれる議員達が除名などの厳しい措置を受けない様に入念な根回しに動いた。幸いだったのが今回の総裁選挙のお陰で、与党幹事長職に国家戦略企画研究所主催のシンポジウムによく参加してくれていた名誉会員が幹事長職に就いてくれたので根回しがしやすかった。
その為アポを入れると気さくに時間を割いてくれた。指定されたのはアポを入れた四日後の一四時から一時間であった。そして、
「いやー、どうもお久しぶりです。でもどうされました、突然折り入って私にお願いしたい事とは?」
と与党幹事長の荘田武夫が折り入ってという言葉がよほど気になったと見え、開口一番で質してきた。武藤はそれに対し、
「今度私、政党を立ち上げようと思って、潰しに掛かられない為に先ずは私のファンを自任して下さって居られる先生にご挨拶にと思いまして……」
と訪問の目的を告げると、
「ええっ、政党?ですか?……でも、あれほど政治家になる事は嫌だと仰って居られたじゃないですか?その貴方が何故突然政党を?」
と不思議でしょうがないという顔つきで質してきた。