小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『ジパングを探して!』 【第3回】 大和田 廣樹 母の葬式後に出てきた23年間分の「家計簿」。これを読んでいるうちに嗚咽がこみあげ涙が止まらなくなり… 京子からグッドのサインが送られてくる。ヒントがないか探すがぴんと来るものはない。ヒントを探しながら、父のことどころか、母のことも自分はよく知らないと感じた。一体今まで自分は何を考えて生きてきたのかと思うほどだ。それで、今日は母の親友に会ってみることにした。家の近所の喫茶店で待っていると、母と同じ年くらいなのに、いつも明るい色調の服をおしゃれに着こなしている齊藤雅子さんが現れた。「健君、元気?」「…