第2章 人間と人生の質を左右するすべての源「思考力」人間力の源
前回、久々に二人で行ったあの合宿から一週間、その週末にボクは変人ポーに呼び出された。
「そこに座りな。超が付くほど大事な話だ」
変人ポーは囲炉裏でもちを焼きながら、すでに一杯やっている。
「こないだの人間力の源となる話、つまり思考の力についての話だ」
「思考力? ああ、人間力四つの力のうちの一つだね」
「そうだ。これがすべての源だと言って良い。人生のすべてはこの思考から生まれているようなものだ。例えば車、飛行機、電話、電気といった発明も、法律や戦争、宗教や歴史まで、細かく言うと人の行動までもそのすべてが、である」
「ちょっと待って。車や飛行機とかの発明はこないだのテクノロジーのことじゃないの?」
「そうとも言えるが、いまはその前の段階の話だ。車も飛行機もそれを発明するに当たっては、いずれも当人の“思考”から出発している。ちなみにそれを思考し、当人はさんざん非難を受けただろうな。そんなことできるはずはないって。発明者当人はそんな他人からの非難や批判、それから常識に負けないような精神力を持っていたことはたしかだよね。それはそうと、いまは思考力の話だ」
「そっか。今日はその大もとの思考力についての話ってわけか」
「そうだ。この思考力が重要なんだ。人間力四つの力の中でももっとも根本的部分にある超重要な力と言って良い」
ボクの身体の中に一瞬緊張が走り、それはすぐにワクワクへと変わっていった。変人ポーは続ける。
「ただ、思考は目に見えないためにそれほど重要だとなかなか気づかないか、または気づいてもすぐ忘れてしまいがちだ。健康と同じと言えばわかりやすいかな。健康の大事さは病気になったときにわかるだろう?
健康はまだ良い。健康は少しでも損なったときにそれを気づかせてくれるからだ。例えば身体に受け付けないものを口にしたとき、人はそれを排泄する機能を持つ。転んですりむいて出血したとしても、やがてかさぶたとなりもとの肌に戻るという蘇生機能もある。他、きりがないほどに多才であるよね。
でも思考というものは、成人以降では特に、これを使い続けない限りは知らないうちに徐々に、気づかないくらいに少しずつ“退化して”いくものなんだ。
そしてこの思考力とは、自己啓発がされてできた集大成、人間力の源とでも言える超重要ポイントなので心して学ぶと良い。はっきり言って、この思考の力を正しく理解するかどうかで、人生は180度だって簡単に変わるものだ」
とにかくこのときの変人ポーはものすごい言いようだった。自分でハードルを上げているようだが、あとから考えてみると、このときにいくらそのハードルを上げても「上げ過ぎた」ということはなかったと思える。実際にそれほどの内容だし、それを変人ポーはボクに正しく伝えたかったのだろう、とことん深いところまでボクらは話し合うのだった。
この日よりほとんど一年間にわたって変人ポーはこの思考力について教えてくれて、またボクもおおいに考え、質問し、理解をしようとした。そして一年経っていったん落ち着いてからその後も、ことあるごとにこの思考の力に関しては継続して二人で話し合っていった。