翌々日の水曜日。その日も三時間目に体育の授業があった。
今日も馬とびだったらいいな! 体育館に入るとすぐにとび箱が目に入った。
「あーあ、やっぱ今日はとび箱かぁ」
「馬とびが良かったよなー」
しばらく体育館の中がざわついた。
(今日の体育は最悪だ!)
としおは心の中で叫んだ。とび箱の苦手な人だけが集められ、先生の猛特訓が始まる一方、上手にとべる人は、自分たちでどんどん段数を増やし、楽しそうにとび続けている。
まさとの得意そうな顔。
「あー、悔しい!」
それに、今日の先生はいつになく厳しい。
「やればできる」
「もっと助走をつけて」
「何も考えないで、勢いよく踏み板をけってね」
「体はこう前に倒して。この前の馬とびを思い出して! 怖くなかったでしょ」
先生のアドバイスで、みんな少しずつ上手にとべるようになっていった。はじめ六人いた仲間も一人減り二人減り、最後はとうとう、としおだけが残った。
ちょうどその時、授業の終わりを知らせるチャイムが冷たく響いた。
「はーい。今日はここまで。とび箱を片づけたら教室に戻って!」
先生の声が遠くに感じられた。
教室に戻っても、としおはずっと下を向いていた。まさとは何も言わない。としおには、それが余計に不気味でならなかった。
帰りの会が終わると、カバンを肩にかけたまさとが近づいてきた。としおは一瞬、まさとを見たが、わざと目をそむけた。まさとはどんどん近づいてくる。そして、としおの前に立った。
「おまえさぁ、本気出せよ。この前怒った時みたいにパワー出せば、とべるからさ」
そう言うと、まさとはタッタッタと走りさった。としおは、わけがわからず、しばらくその場に立ったままでいた。
「としお君、体操服に着替えて!」
山上先生に声をかけられ、としおは、はっと我に返った。
「えー、今からですか?」
「そう、今から」