同級生が、
「えっ、分かったなら教えて?」
と言うと、
「つまりね、重複立候補のせいよ。与野党の小選挙区の立候補者は、そのほとんどが重複立候補者だから小選挙区で選挙活動すれば比例区で選挙活動する必要はないという事。つまり小選挙区制の選挙区では自分の名前を書いて欲しいと訴えて、比例区は自身が所属する政党名を書いて欲しいと訴えることで小選挙区と比例区の選挙活動が同時にできてしまうという事、分かった?」
と解説してみせた。その説明を聞いた同級生は、
「何となく分かったような、未だすっきり理解できなくて何かもやもやしているけど……」
と言った。このやり取りのお陰で武藤はある確信を得た。
(そうか! 私の立ち上げる政党は逆をやればいいんだ)
と心の中で叫んだ。武藤は、新党立ち上げとその先の衆議院小選挙区比例代表制選挙での勝利への工程を着々と築き上げていった。しかし、その中ではこんな指摘が知恵袋役を務めてくれる山脇からなされた。それは、トップ会談の席上で、
「姑息だと批判している小選挙区比例代表制選挙に挑むに当たっては、我が党から立候補する小選挙区立候補者には予め、重複立候補できないことを周知徹底して臨まないとトラブルの元になると思われるが、その点は大丈夫かな?」
と指摘され、
「はい、やり様によってはそこも武器になると思っていますから問題ありません」
と武藤らしく言い切った。
(今回私の立ち上げる党から小選挙区で戦う候補者達は、過去に何れも無所属候補者として当選経験があるから大丈夫だけど……。神奈川で小選挙区を戦う彼は比例復活でしか議員経験がないのよね、彼は重点要応援体制が必要)
と一人だけ不安を隠し切れない対象が頭に浮かんでいた。