運命の出会い

圭は研究所の中に入っていき、そのまま二階にあるジャックの部屋に向かう。顔なじみの女性秘書が手を上げて声をかけてくる。

「ハーイ、ケイ、ジャックが部屋の中で待っているわよ」

ジャックはこのグローバル企業のフェロー研究員で、最先端のアーキテクチャーを研究している。ジャックは今回世界中から若手研究者を集め、大きなプロジェクトを立ち上げることになっている。日本からは一緒に仕事をしたことがある圭が、そのメンバーとして三日間の会議に参加する。

会議が始まり、最初にプロジェクトの概要説明が行われ、課題が一つ一つ議論されていく。プロジェクトでは、AIとビッグデータを使った宇宙探査、気候変動、医療分野への応用技術が議論される。最新のITテクノロジーを使い、基本アーキテクチャーを確立するというプロジェクトだ。

ジャックは会議の最終日、八か月後の来年にまたここに全員が集まり、三か月かけてプロジェクトのまとめをすることを決めていた。

三日間の会議が終わると、ジャックの家にプロジェクトの参加者全員が集まり、パーティーが開かれる。ジャックの家は郊外の山の上にある。その家のリビングにある窓は、見通しの良い全面ガラス張りになっている。そこからは視界が大きく開けており、眼下に街が見え、夜空には星が輝いている。プロジェクトの参加者達が思い思いにグラスを片手に、そのガラス張りの大きな窓の近くに集まる。

室内の照明が消され、眼下の街の光が宝石のように輝いて見える。プロジェクトの参加者達がしばらくそこに集まって待っている中、窓から見える星空が少しずつオレンジ色に輝き出す。突然一本の稲妻が、暗い空を駆ける龍の姿のように光り、それを待っていたかのようにジャックが大声を上げる。

「イッツ、ショータイム!」

すると、空いっぱいに稲妻が次々に光り始める。とてもここが地球上にある土地とは思えない。圭も他の惑星にでもやってきたかのような不思議な感覚になる。

そんな稲妻のショーは二時間ほど続く。ここは砂漠地帯にある街でとても乾燥していて、年間通して雨はほとんど降ることがない。ただ、この季節の一時期だけ、空気が冷え込む夜の短い時間、オレンジ色に輝く稲妻を夜空いっぱい次々に光らせる。

稲妻のショーが終わると部屋の照明が点き、圭はその日のパーティーを楽しんだ後、車でホテルに戻っていった。次の日、LA経由で日本に帰国する圭が、空港までレンタカーでやってくる。空港ではこの時期によくある落雷注意報が出され、LA便は三時間ほど遅れたが、LAから日本まで予約していた航空便になんとか間に合い、予定通りに帰ることができていた。