~まひるを守る~

夜、ヒカリを寝かせた後、凛は1人で、今までのまひるとヒカリとの生活に想いを馳せていた。短い様だが、凛にとっては、いつもまひるを見守っていた時間は長かった。まひるに対する気持ちが強くなるにしたがい、まひるの心の動きが分かる。

凛は、心で集中した。「まひるが困っている」凛は急いでホテルのラウンジに向かった。

そこには、佐伯とまひるの姿が見えた! あいつは、しっかりしながらも何をしてるんだと、凛は怒りながらもまひるの側へ行った。

「悪いんですが、先約があるものでここで失礼します」と、凛は強引にまひるの手首をつかんでラウンジを後にした。

「お前! 何やってるんだよ!」

と、凛はまひるに言いながらも自分の頭を冷やした。

「まひるの言い分は分かるが、今は俺が居るだろう」

凛はもっと、まひるに頼って欲しかった。今まで苦労してきた事は知っているが、これからは自分を頼って欲しかったのだった。

家に着くまでの間2人は言葉を交わさなかった。凛には、まひるの気まずさが分かっていたからだった。家に着いてまひるがカウンターテーブルに座り、凛が水をまひるに渡した。

まひるは「ごめん! 有難う」と、凛にしおらしく謝った。凛は「別に!」と言っただけだった。そして、凛はまひるに何も言わずに部屋へ戻って行った。シングルマザーとして、仕事とヒカリの世話をする事の大変さを凛は知っていたからだった。

ある日、凛は幻覚を見ている様だった。自分の手先が透き通っている気がした。

【前回の記事を読む】【小説】「僕が守るから、まひる」…幼い頃に起こった悲しい事故の真相とは