小説 『夫 失格[注目連載ピックアップ]』 【第20回】 時亘 一肇 夫が2階に上がるたびに走る緊張感。少しずつ、少しずつ、荷物を運び出し、夫から離れる準備を進める…絶対に悟られてはいけない 【前回記事を読む】昼夜問わず怒鳴り続ける夫の声は、ご近所中に広まっていた。遂に家を離れる決心をし、行動することに…女性センターに電話すると、提携する弁護士さんを紹介してくれた。そして後日、その弁護士さんに会いに行った際、「離婚される気はありますか?」と聞かれたので「はい」と答えると、「では家を出ないといけません」と。離婚調停をするにあたり、同じ屋根の下で当事者同士が一緒に生活しているのはおかしい…
小説 『みわがしろ』 【第3回】 長石 潔 正月行事に奔走する若き中小姓。ふと気づけば三月に……年中行事の手引きに気になる記述が 【前回の記事を読む】今回の藩主への謁見により雄之助は家老である岡本安尊の娘婿として認められ、中小姓書役見習いとして出仕することになった「過分なるお言葉、恐縮でござる」と、雄之助は、はにかんで見せた。太田は岡本家が代々の名門であることや、雄之助の若奥は気立てのよい女子(おなご)であるとか一通り世辞を述べた後、「それでは、そろそろ本題へ……」と、件(くだん)の四つ目袋綴(ふくろと)じの冊子を雄之助の…