病気の前触れのサインを見逃さない

胃腸の不調は病気になる前触れである場合もあります。症状が強く出ていても、病院が好きではない、仕事が忙しいなどという理由から、受診と検査を先延ばしにしている人が多くいます。40歳近い年齢の女性で、出産後、排便時の出血を気にしている方がいました。

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と軽く考えていたようです。

ところがある日、血便が出て近くの肛門科を受診。そこでは異常は見つからなかったけれど、気になったので私のところへ大腸内視鏡検査を受けに来られました。

結果は直腸に腫瘍を認め、内視鏡診断では早期がんでした。これを見つけてすぐに早期治療を勧めましたが、出産直後で育児に手が離せない彼女にとっては1週間の入院でさえもできないというのです。病気が見つかり、これからどんな治療が必要でどんな経過になるのかがわからず、不安がとても大きいようでした。

この方の場合には、おしりに近い部分のがんであり、外科手術であれば人工肛門となる可能性もありました。しかし私はいきなり手術ではなく、侵襲の少ない内視鏡治療でまずは診断的に切除し、病理結果を確認してからその後の治療法などを判断するのがいいでしょうと説明し、根気よく説得し、治療を受けてもらいました。

幸いにも結果は内視鏡治療で根治できている病理結果でした。現在も再発なく定期検査に受診されています。

実は彼女のように、出血があると痔だと自己診断してしまう人が結構います。しかし彼女の場合は、それでも「おかしいかも」という前触れのサインを見逃さなかったことで早期発見、早期治療に至りました。そのため、開腹手術を行わずに済んだことが、結果として入院期間を短くすることにもつながりました。

気になる症状があったら自己判断せずに、早めの診察、検査を行うことで、命を守り、治療にかかる時間や経済的な負担も大幅に減らすことができるのです。