二人は本の表紙にあるマークを見比べた。数字の8を横に倒した無限を現すマークの形、その二つの輪が交わる中心には、丸い惑星のような物があり、二つの左右の輪の中にも、同じようにそれぞれ惑星のような物が描かれていて、二冊のカバーデザインはとてもよく似ていた。ただカイユの本のカバーは紙ではなく革で作られていて古い魔法書のような重厚感があった。
ベルサは色々聞きたくて、目を輝かせていた。それを見たカイユは、本を手にするまでの経緯をベルサに話し始めたが、近所の少年達が大声で話しながら近付いて来た。ベルサは彼らをチラッと見ると、カイユの耳元で、放課後公園に行こうと小さく呟き、その場から去った。 それを見た少年達は、カイユに近付き、からかい始める。
カイユは、恥ずかしい気持ちを隠すように笑みを浮かべながら、いつものようにただ何も反論せずにやり過ごした。その中で体の大きい少年が、カイユの肩に手を回し言った。
「カイユ! 今日の放課後、隣町とサッカーやるから来いよ! 一人足りなくてよ、勿論来るよな?」
カイユは、そう強く言われると断れず頷いた。少年らはカイユから離れると、振り向いて、カイユにもう一度、念押しして、先に学校へ向かった。カイユは、ベルサと約束したのにもかかわらず、強く言われると断れない自分は嫌だったが、それよりもベルサと話せた事が嬉しく、今から放課後が楽しみでワクワクし足取りは軽くなった。
そんなカイユの少し後ろを一匹の猫が後を追うように歩いていた。そして更に、その後方を黒いスーツ姿の若い男が、カイユの様子をうかがいながら歩いていて、カイユが校門をくぐったのを見届けると男は姿を消し、猫もまた狭い物陰へと消えて行く。
カイユが教室に入ると、ベルサは先に席に座っていて、何事もなかったように本を読んでいた。他の子らは最近、町で猫男と言う猫の顔をした人間が出没したと言う噂話で盛り上がっていた。
カイユはその会話には全く興味を示さず、ベルサを横目で見て、さっき話したのが信じられないくらい、彼女との距離を感じていた。授業が始まると、カイユは、変な時間にベッドから落ちて起きたせいか、苦手な数学だったからか、眠くなりウトウトし始め目を閉じた。