そして気を取り直して次なるターゲット衆議院比例東京ブロック、定数一七名に小選挙区候補者を擁立すべくヘッドハンティングを開始していった。
衆議院比例東京ブロック内で真っ先に武藤が口説いた議員が、与党入りを果たしたが意に反して国替えさせられた衆議院議員であった。
「今回の選挙は何かと大変でしたね、お察しします」と武藤が言うと、
「ええ、まあ突然国替えでしたから何かと勝手は違うし、相手がその昔、お世話になったボスでしたから、やりづらかったのは確かです」と胸の内を明かした。
「でも、急に国替えさせられて党首を務めた嘗てのボスに六,〇〇〇票差まで詰め寄ったのだからあっぱれ! だわ」と言うと
「それより折り入った話って何ですか? とても気になりますけど……」と武藤の呼び出しを少し訝って言った。
「貴方を私のよき理解者と信じて、単刀直入に言うわね。次の選挙私が立ち上げる党の公認候補として立候補して欲しいの。貴方の国家観や安全保障に関する考え方にとてもシンパシーを感じています。だから私と一緒にこの国を変える原動力として貴方の力をお貸し願えないかしら?」と武藤はズバリ切り込んだ。
「武藤先生、新党を立ち上げるんですか?」驚いて議員が確認すると、
「そうよ、党名は『日本民主保守党』で小選挙区と比例区で一〇〇名以上を当選させて、連立政権入りして、主要ポストを要求していくわ。その中で貴方には防衛大臣か防衛副大臣を担って欲しいと思っています」と武藤が人事構想にまで踏み込んで話すと、
「そんな事まで聞かされたら、もう断るという選択肢は私にはないじゃないですか。分かりました、お引受けしますから他に考えている人事も差し障りのない範囲で教えて頂けますか?」とその議員に質され武藤は、
「拉致担当大臣を楯岡剛さんにやって貰おうと思っています。国土交通副大臣を佐山明彦さんにお願いして、尖閣諸島問題を担って貰おうと思っています」と話すと、
「素晴らしい人事案じゃないですか、一気に問題が前進しそうだ」と武藤の人事構想を誉めてくれた。
そして、次の選挙で武藤が立ち上げる政党から東京の小選挙区に立候補する件を最終的に詰めていく中で、
「えっ、領収書不要で使い道を問わないとされる文書滞在交通費を、こんなに詳細な支出明細を添付しなければならなくするんですか。厳しいなー……、それ!」と少し不満げに言った。すると武藤が、
「貴方までそんな事言う! 地方議員さん達はとっくの昔に領収書を添付して、ネットで政務活動費を公開しているでしょ」と少し語気を強めて窘めると、
「……そうですね、我々国会議員の甘えですね。分かりました、党の方針に従います」と受け入れてくれた。