俺はネットで飲食店の事件を検索する。肉食地区のニュースの中でも、こうしたマイナスイメージのものは当の肉食地区では極簡潔に報道される。一番詳しく取り上げるのは中間地区のメディアで、グリーンランドではあえて最低限の情報に抑えているという。

今のところ分かっているのは被害者の名前だけで、名前占いのデータには不十分だった。犯人が見つかれば、その両親の名前と顔も分かるのだが……。犯罪者の責任は犯人の親にも多分にあるとされ、親の情報公開が行われるようになり犯罪自体は減少したように思う。

養父母の場合も公開されるので統計学的にも役立つそうだ。子供は親を選べない……というのはよく聞く話だ。なら、親も世間に晒されることで責任を取るのは当然だろう。カシューナッツをつまみながら関係の無い広告をクリックしてみた。こういう日は、なぜか買いもしない物ばかり見てしまう。

その後、ニュースの関連記事を読む。幼児他殺被害人数は日本の肉食が始まった頃から増加しており、貧困家庭といっても病気などではなく働かないことや娯楽が原因らしい。明治以降、公然と肉を食べ始めた親世代の人間的品質の低下による変化だろうか。

中間地区ではグリーンランドの政策で成功と思われるものに追随する傾向があり、犯罪者の親の情報公開などもその一例だ。他にも、占星術や九星、血液型等の様々な角度からの相性診断で子供の出生日を推奨する機関を政府が設けるなど、ユニークな発想もある。

現に育児放棄や子供の虐待は少なくなっているようだ。肉食地区と切り離したのが最大の理由だとの意見が多数派ではあるが。自動車免許ならぬ子育て免許もグリーンランド発案である。肝心の結婚相手に関しては、届け出をして申し込めば同じ機関からそれなりのデータはもらえるが、俺は入会をためらっていた。

噂によると、客観的な情報の相性のみでそう簡単に男女がまとまるはずもなく、成婚率は三割未満らしい。中間地区がグリーンランドの政府から取り入れた制度で特に良かったものは、年に一度の住民投票による政治家の退任選挙だ。

それなりに厳しく定められた一定数を越える票数を集めた議員は辞任しなくてはならない。

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