「……なおゆき。……真剣さが伝わってきちゃって安眠妨害なんだけど。……もっと不真面目にやって」
「……オヤツでも食うか? パセリ」
ネコの敏感さには負ける。
「……PMS中のヒトのメスじゃあるまいし、そんなにパクパク食わんわ」
パセリが言うには、
「ヒトのメスはPMSのシーズンにムリなストレスを与えられると、普段は平常心で流せる事にもキレる性質に変貌を遂げるから危ない。この時期は子育てもヤバくなる。特に、仕事を持ったメスは男性化しているし、家庭に納まっているメスより何倍もムリを強いられているのでキレる可能性は大。ちょっとした事ですぐ事件になる。オスが楽をするために家庭に納まりメスを仕事に出すのであれば、よほどうまくやらないと子供の虐待を増やす原因になる」
という事らしいのだが……。
こいつの元飼い主は医者か? ……ネコのくせに変に知識のあるヤツだ……。
しかし、男が家事と育児を完全に引き受けて女が働く場合はいいのだろうか。男はPMSが無い分、感情が安定していて子供の世話に向く一面もある。だが仕事をする女性以上に生来のテストステロン値は高いはずだ。その弊害はないのか。それに女性が賃金で一家を支える事を任されるほうがより大変ではないだろうか……? だが、それでも仕事をしたいという女性がいるのもたしかだ。
パセリはPMSでもないのにしっぽをパタパタと動かし不快さをアピールしている。
「これ以上どうしたって静かにできないんだけど」
パセリの後ろ姿に向かって恐る恐る言う。頭で考えているだけでもパセリの第六感には届いてしまうらしい。仕方なく、パセリの好きなJポップを小さくかけて自分の気配をごまかしてみた。
……なぜ自分の部屋でここまで気を遣わねばならないのか……。