「花魁を後妻にする気はないのですかね」
「金のなる木を自分で食ったら、儲からないじゃないか」
「それもそうですね。タコと同じだな」
「身請けされれば千両(一億円)から二千両(二億円)になるからな」
「そんなにですか」
「そうだよ。だから花魁になる素質のある娘は磨きに磨きをかけて、高く売れるように、教育するんだよ」
「それで、お女郎さんより、気品があるのですね」
「先生にも分かるかい」
「はい」
「こうなったら北はないものと思って、来るお客を呼び込むことにするか」
「それがいいですね。人間でも動物でも生まれてきたら、生きる権利がありますからね」
「そうだよな」
「お願いがあるのですよ」
「なんだい」
「瓦版屋に瘡毒がなくなった宣伝をさせたいのですよ」
「それはいいな。誰が頼みに行くんだい」
「私が行ってきます」
「そうかい。なら頼むよ」
「瓦版屋は何処にありますか」
「浅草寺の門前だよ」
「ここから近いですね」
「行けばすぐに分かるよ」
「そうですか。では行ってきます」
「ちょっと待った!」
「なんですか」
「金は誰が払うんだ」
「無論、元締ですよ」
「なんだい。先生が払うんじゃないのか」
「当たり前ですよ。瘡毒を治したのは私で、頼んだのは元締ですよ。それに、私のお陰で儲かるのも元締ですから、払うのは元締ですよ」
「何か分かったような、分からないような……」
「儲かるんだからいいじゃないですか」
「そうだなぁ~」
「では、行ってきます」
「なんか騙されているみたいだな。だとしたら。ホント、悪いヤローだなぁ」