「それが必ずしも悪いわけじゃないけどな。自分に都合よく解釈することで、前向きに歩いていけるっていう側面もあるから……いや、話が逸れたな。カシマレイコの存在が確認されてないって話だけど、じゃあ今、一般に流布してるカシマレイコの都市伝説は、どこからきたんだ?」
「分からねぇな、少なくとも今は。別に、都市伝説のすべてが妖怪から始まるわけじゃねぇだろ。それこそ思い込みってやつだ。テケテケはどうだ? 彼女は、元は妖怪じゃねぇ。事故で死んで、幽霊として留まってしまったものが、一人の人間の言い出した噂が広がって、言霊になったことで、彼女は妖怪になった。
でも、同じ状況になったからといって、必ず妖怪に変化するわけでもねぇだろうし、そもそも、都市伝説カシマレイコの噂が完全な作り話なら、いくら言霊の力が強くても、無から妖怪や幽霊を作り出すのは無理だろ」
「カシマレイコの都市伝説が、完全な作り話、か」
「別におかしくはねぇ。全部検証したら、噂になってもしょうがないような事件なんて、ほとんどないと思うぞ」
「けど、だったらなんで、今起こってる行方不明事件に、カシマレイコが絡んでるって噂が出てきてるんだ?」
「それが分からねぇから困ってんだ。人間の社会に溶け込んでる妖怪たちの中で、そういう噂が流れてるのは確かだ。けど、誰も噂の出処を知らねぇし、カシマレイコと知り合いどころか、見たことがあるヤツもいねぇ。まあ、引き続き調べてはいくけどな」
「口裂け女やテケテケに劣らない、知名度がある都市伝説だし、何か元になる話があると思ったんだけどな。俺は、何か元になる事件や噂がなかったか、もう少し調べてみるか」
「失踪者の行方は、まったく掴めてねぇのか?」
「残念ながらな。共通点がないんだよ、失踪者に。カシマレイコじゃなく、別の誰かが何かを仕掛けてる、もしくは誘拐しているとしても、何が目的で、何を基準に誘拐する人間を選んでいるのかが分からない」
「厄介だな……」