二人で、かくれんぼや、人形を使って戦いごっこをして遊んだが、今思い返すとジルは遊びを通し、そのつど大事な事を教えてくれていた。かくれんぼでは、人の見付け方、隠れ方、遊びながら剣の使い方など、未だ色々とあったはずだが思い出せなかった。
でも、その中でいまだに意味は分からないが、鮮明に思い出す言葉があった。それはある日、海岸沿いを散歩していた時、ジルがボソッと独り言のように海に向かい放った言葉だ。
『現実の世界は、全て自分が創っている』と言うものだった。
天井を見詰めながら、その言葉の意味をもう一度考えていると、バナルバがいつの間にか家にやって来たらしく、朝の用意をする音が聞こえた。いつのまにかその音を聞きながらカイユは再び眠気に襲われウトウトし始めると、
「カイユ! もう学校に行く時間だよ!」
バナルバに大声で呼ばれ眠気は吹き飛び、慌てて学校へ行く用意をし始めた。
朝の冷たい潮風を感じながらふと窓を見ると、おでこに珍しい白い輪っかの模様がある黒猫が部屋の中へ入ろうと機をうかがっていた。
「ごめんね……」
猫が入れないように窓をしっかりと閉めて、玄関へ向かった。
玄関を出ると、カラフルな家々が目に入った。この辺りは観光で訪れる人が多く、街並みも綺麗に整備されている港町だ。ちなみに自分とジルの家は海が見える小高い丘の上に建っており、そこから見える風景は宝物だった。学校はなぜか町の一番高い丘の上に堂々と鎮座して町全体を見下ろしており、そこに通う13歳の男子中学生にとっては中々きついものがある。
誰が、あんな場所に校舎を建てようと思ったのか、そんな事を考えた時もあった。毎朝の通学では人通りが少ない、もっと言えば観光客が通らない道を日によって選んでいた。