私は風邪を引いたみたいだから、お風呂はいいと言い、すぐに部屋に入った。窓を開けてやると、するりとベッドの上に乗り、こちらを見ている。
ーーーどう見ても普通の三毛猫だ!
私は突っ立ったまま、まじまじと見ていると、唐突に「まあ座れ」と指図された。猫からの指示に、言われなくても私の部屋だ、勝手に座るよ、と思いながら腹を立てていると、すかさず猫が言いつのる。
「あぁーそうだなぁお前の部屋だもんな」と。
「やぁっだぁー頭で思った事が知られちゃう」
と私が大きな声で言うと、
「どれもみんなわかるわけじゃないから、集中している時だけだから安心しろ」
と猫は落ち着いた感じで言うのであるが。
私はそれを聞くと余計に心配になった。
「そんなの、いつ集中しているかわからないじゃないの!」と言い張ると、
「めんどくせえな!!」と投げやりな言葉が返ってきた。やくざ猫かお前は、言葉遣いが悪いぞと思うのだった。
そんな私の考えを知っているのかわからないけど、悪態をついたことはどうもスルーされ、もう何か話す態勢に入ったみたい。
「いいか、今から話す話を静かに聞け」
「わかったわよ」私は大人しく心を無にする。
「じゃ、説明するぞ。……俺は基本、普通の猫と変わりない生活をしている。昔の記憶は持っているが、それでどうこう出来る訳でもなく、またしたいとも思わない。ただ時折お前みたいなのに見つかったりすると困るから、都会では暮らさない。少し他の猫と行動が違ったりするだけでも目立ってしまうからな」
猫は生活一般みたいなことを話す。
「いや、そうじゃなくて、なぜ話せるの!」
私は一番聞きたかったことを聞く。
「それは知らない、昔からそうだったから」
威張って言い張る猫。何なんだー
「じゃ、知っていることを話して」
私は話させているうちに何か見つかるかもと考えた。すると猫は大きく前足を伸ばすと、ゆったりとして昔語りを始めるのだった。
「俺は長生きだ。二百年くらいは生きる。普通の猫が長くても二十年、十倍は余裕だな。そして生命が尽きる頃に生まれる子猫に記憶は受け継がれる。でもそうやって生まれた子猫もやっぱり生活自体は他の猫と大して変わらない」落ち着いて話している猫に親しみを感じつつ私は聞いてみることにする。
「ふぅーん、そうなんだ。ちょっと落ち着いてきた……うん、それじゃあさぁ、これまでに気付かれた事はある、それとも私だけ?」
私は質疑応答に変えていくことにした。
「いや、何人もいるぞ。こちらから名乗った場合もある。お前の母親もその一人だ」
「お母さんが……何も聞いていないよ!」
事もなげにこの怪異を母に語った事を知り、驚いた私は、思わず叫んでしまっている。