昼の時間になる。普通なら自由に気の合った仲間との楽しみな時間だ。中学の時はいつも周りに仲間がいて他愛のない話で盛り上がっていた。そんなグループに入れない奴も一人や二人はいたけど、高校に入って自分がそんな少数派の一人になるなんて思ってもいなかった。周りの弾んだ声に身を固くして一人で席に座り、弁当箱の蓋を開けた。
ウインナーに卵焼き、少しのブロッコリーと白飯。白飯にはふりかけがかかっていた。「何だよ、今日もウインナーかよ」
そう言って純太の弁当のウインナーを手掴みしたのはアキラだった。
「お前の親、毎日同じ弁当で楽し過ぎじゃねえ」
黙っていると次に紘一が卵焼きに手を伸ばした。
「俺は好きだけどな、弁当のウインナーと卵焼き。毎日でも」
アキラは紘一と笑った。毎日でも食ってやるというつもりらしい。
箸を手に弁当を持ち上げると今度は榊原が自分の右手の甲で純太の持っていた弁当箱を一撃ではたき落とした。
「あ、わるー、三秒ルール、直ぐ拾えば大丈夫。ワン、ツー、スリー、アウト」
教室に笑いが起こった。
純太は床にしゃがんで、ひっくり返った弁当箱を持ち上げた。床の上にふりかけのない白いご飯が真四角に残った。
小さなグループで固まって食べていた女子も一斉に俺を見た。その中で頑なに純太の方を見ようともしない綾乃のうつむいた横顔を見た時、純太はちょっとみじめな気持ちになった。