エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『ノスタルジア』 【第23回】 森下 修作 「躰だけじゃなく、心も病んじゃったのかしら」看護師と隣の患者がこそこそと自分の話をしているのが聞こえ・・・ たとえば看護師に自分では、おはようございます、と口を動かしていても、看護師には怪訝な顔をされる。諦めてあきらめてぷいと横を向き、嘆息する。簡単なおはようございます、など身振り手振りで伝わりそうだが、相手には、なんだかしまりの悪い戸を引いたとき時のような、軋み音が、かすれ、とぎれながら、ただ吐き出される二酸化炭素にすぎないこととなる。親族待合室までたどりつき、修作は中に入った。先客が座っている。患…