AI。そう、この人工知能のことは変人ポーより何度も聞かされてきた知識だった。これは何も未来の話ではなくIT産業における各種サービスはもとより、中国でもその導入ぶりは凄まじいらしい。そしてシンギュラリティなどのことも変人ポーより幾度となく聞かされてきた言葉だった。

「AIの世界はどうだ? 便利だろう? とてつもなく」

「うん、とてつもなく……」

「実際、この世の誰もが体験したことのない便利な世の中へ突入しているから、この危機さ加減ってのは本当の意味でまだ誰にもわかっていない。父さんにもね」

「危機というのは”ありがとう”がなくなって”あたりまえ”が増えていること?」

「そうだ。はっきり言ってこれから世の中が便利になればなるほど、人間力は求められる能力と言って良い。なぜなら、世の中が便利になればなるほど薄れてなくなるものは”ありがとう”だけではなく、この人間力こそ失われていくものだからね」

ボクはこのとき、今回の泊まりで変人ポーが話してきたことがすべて繋がってきたような気がした。そうだ。物心付く前から変人ポーにより躾けられてきたものが人間力だとすれば、あるいは変人ポーに改めてこれから教わるものの正体が人間力なのであれば、これからの時代に重宝されるものばかりではないか。

AIだけではない、5Gやその後の6G、ブロックチェーン、IoTなどの新しいテクノロジーがこれからもっと浸透すれば、人とのコミュニケーションや思考することなどは必要性が減ってくるだろうし、感謝の心や”ありがとう”が”あたりまえ”によって失われていくセオリーにも合点がいく。