(7)生命の輪舞
真冬の、大しけの海に
ど~ん、どど~ん、どど~ん
ぶつかり合う波間の、暗い渦の中から
細かい粒つぶの生命があとからあとから
いっせいに湧き上がってきます。
荒波にもてあそばれてひしめきあったり離れたりしながら、
ど~ん、どど~ん、どど~ん
粒つぶの生命はかがやく無数の白い泡をくぐりぬけて
みるみる海面に満ちてきました。
嵐の冬の海に湧き上がる、生命の誕生のこの瞬間。いったい今まで、どこで息をひそめていたのでしょう。無数の小魚たちが、そこらじゅうから湧きあがり、寒風と波しぶきの中からたった今生まれたばかりの粒つぶの生命に、いっせいに群がります。
すると、あっという間にどこからか、イワシやアジの大群が、たがいにはげしく入りみだれ、小魚の大群をとり巻いて、銀一色にもつれ合い、海面がみるみる、お祭りさわぎのようにふくれ上がっていった時でした。とつぜん、
アッチャパッチャ、ノーチャ、アッチャパッチャ、ノーチャ、
ヘイヤ、ヘイヤ、ホッホッホ、ごはんだぞ~!
アッチャパッチャ、ノーチャ、アッチャパッチャ、ノーチャ、
ホアニ、ホアニ、ファララ、ごはんだぞ~!
ブリの先頭集団がいさましくさけんで、猛スピードで泳ぎはじめました。
さあ、たちまち活気づいたブリの大群は、嵐の海をまっしぐら!
イワシを追いかけぐんぐんぐん、アジを追いかけぐんぐんぐん、猛スピードでぐんぐんぐん、今までは、のんびりビリのおじさんまでが、坊やをしっぽにくっつけて、仲間をぐんぐんゴボウ抜き、ごちそうめがけて、ぐんぐんぐん。
「しまった! 網だ!」