第一章 名言は処世のサプリメント
薫習 ―仏教の唯識―
お香の匂いが衣に移るように、その人の身・口・意が周りに影響を与え、また影響を受けながら人生を作ります。「我逢人」という言葉があります。良き人との出逢いは人生を豊かにします。それは出逢った人の良い影響を受けたのです。それが「薫習」。 良い言葉は良い心を育て、そして良い習慣は良き人を作ります。良い人の薫りは日常の良い習慣から。
良い薫りを身に纏いたいものです。私の中の禅と禅語 書作品を作る上で、最も多く使われるのが禅の言葉のようです。禅は悟りと表現されますが、それは、特別な修業の中にのみあるのではなく、修業僧の多くの経験と出逢いとによって得られた“生きる為の智慧”のことだと理解しています。そして、日常の行、住、坐、卧の中で得られる“よりよく生きる”という教えでもあります。
又、禅は、「不立文字」という言葉で表されるように、教典や文字で“真理”は伝える事が出来ず、以心伝心や教外別伝のように、真理は“感じるもの”であることを教えています。禅とは、始める、行動する、継続するという事の中で悟っていくものなのです。頭で考えるのではなく、身体で感じ取るものなのです。
「我逢人」という禅語があります。我れ人と逢う、と読みます。人との出逢いからすべてが始まります。良い人との出逢いは人生を豊かにします。人との出逢いは勿論のこと、物との出逢い、経験するすべての物事との出逢いが人生を作って行きます。
「冷暖自知」、冷たいも暖かいも経験して初めて解るもの。自分で行動し、経験することの大切さを伝えています。「知足」は、今有る状況に不満を持たないこと。「非思量」は、心の中の不安や心配事に囚われず、サラリと受け流すこと。等々……。楽に生きられる“なるほど”と思える言葉が沢山記されています。